学校日記

7月25日 渚西中学校区小中合同研修

公開日
2025/07/28
更新日
2025/07/28

研修

7月25日、渚西中学校にて、渚西中学校・磯島小学校・西牧野小学校の教職員が一堂に会し、キャリア教育に関する小中合同研修が開催されました。

講師には、前京都市立岩倉北小学校長であり、現京都市教育委員会首席指導主事の三浦清孝先生をお招きし、「課題を可能性に変える学校づくり」をテーマに、子どもたちの主体性を引き出すキャリア教育の実践について深く学びました。

コロナ禍を乗り越え、子ども中心の学びへ

研修では、まずコロナ禍で直面した教育現場の課題と、それに対する対応が共有されました。

進行のポイント:

  • 子どもたちの主体性を尊重: 2020年3月の休校という困難な状況下で、子どもたちや教職員が進むべき方向を見失いかけた中、京都市教育委員会からの通達による制限が多い中でも、子どもたちの主体性や成長を阻害しないよう工夫が凝らされました。

  • 「京都キャリアパスポート」の活用: 同年スタートした「京都キャリアパスポート」が、子どもたちが「自分のやりたいこと」を記述し、主体的に学ぶための強力なツールとして活用されたことが報告されました。

また、「学びのオンオフ」について、本来子どもが主体的に決めるべきであるにもかかわらず、現状では教員が決めていることが多いという問題提起がありました。一斉指導や同質性の追求が、個々の子どもの成長や主体性を妨げる可能性があるため、今後は子どもたちの多様な興味関心に合わせた指導への転換が求められます。

学校行事は「キャリア形成の足場」

研修では、学校行事が単なるイベントではなく、子どもたちのキャリア形成において重要な役割を果たすことが強調されました。

学校行事の意義:

  • 全員がスタートラインに立てる機会: 算数や国語の授業とは異なり、誰もがスタート地点に立ち、自分や他者のために何かをしたいという気持ちを引き出せる場となります。

  • 年間計画との連動: 学校行事は単体で機能するのではなく、キャリア教育の年間計画と連動することで、子どもたちのキャリア形成を段階的に積み上げ、次の行事へとつなげます。始業式、一年生を迎える会、宿泊学習、運動会、学芸発表会などがその例として挙げられました。

  • 自己決定の促進: 行事のゴールやスタートラインを子ども自身が設定できることが特徴であり、「できること」だけでなく「できそうなこと」「やってみたいこと」を目標にすることで、子どもたちの挑戦意欲を育みます。

キャリアパスポートフォリオと個別成長記録の重要性

岩倉北小学校での具体的な実践事例として、キャリアパスポートフォリオ個別成長記録の活用が紹介されました。

記録の具体的な運用例:

  • 5年生からの作成: 5年生のスタート時にキャリアパスポートフォリオを作成し、得意なこと、良いところ、将来の夢などを記入。年間を通じて随時書き足していくことで、長期的な成長を可視化します。

  • 行事ごとの振り返り: 一年生を迎える会や運動会、宿泊学習などの主要行事ごとに、スタート時の気持ち、取り組み、振り返りを記録。特に宿泊学習では、「友情と協力」を獲得した具体例として、火起こしを2人で協力して成功させた体験が赤字で書き加えられ、活動中の気持ちの変化を重視していることが示されました。

  • 月間・週間の振り返り: 授業時間外に月ごとの振り返りを行い、色分けして「前向きな力」「全力」などを記録。週ごとの目標設定と振り返りを月ごとにキャリアパスポートに反映させることで、日々の学びがキャリア形成につながるよう工夫されています。

  • 教科との連動: 国語や算数などの教科学習においても、前向きな自分や助け合いができた場面を記録し、自己評価に活用することで、教科横断的なキャリア教育を実践しています。

これらの記録は、子どもたち自身が成長や獲得した力を自覚するために不可欠であり、記録がないと6年間の学校生活で何を得たか分からないまま過ごしてしまうリスクがあるとのことでした。

委員会活動の改革と学校全体の「当たり前」に

キャリア教育は特別な時間だけでなく、学校生活全体で実践されるべきであるという考えのもと、岩倉北小学校では委員会活動の改革も行われました。

改革の経緯と成果:

  • リセット: 2020年に発生した「学校の課題」を機に、次年度の6年生担任と教務主任が委員会活動のリセットを提案。子どもたちが「どんな学校にしたいか」を提案し、それに基づいて委員会活動を再構築しました。

  • 子ども主体での運営: 委員会数を減らし、5・6年生が必ず参加するルールを設け、人数差が大きい場合は子どもたち自身が話し合いで調整。この取り組みが2025年現在、5年目を迎え、「自分たちで学校を作る」という意識が当たり前の文化として定着しているそうです。

  • 試行錯誤のプロセス: 休み時間を委員会活動に費やしすぎたため、企画委員会を廃止して全員で話し合う方式に変更するなどの試行錯誤も経て、より良い運営方法を模索していることが紹介されました。

小中連携、そして「ゼロ歳から18歳まで」のキャリア教育へ

研修の後半では、渚西中学校区におけるキャリア教育の取り組みと、今後の展望が共有されました。

校区全体の取り組み:

  • 9年間全体計画の作成: 今年度、磯島小学校を中心にキャリア教育の9年間全体計画が作成されました。育成指標を可視化・共有し、系統的に積み上げることを目指しています。

  • 他校事例からの学び: 福島県棚倉小学校の視察事例を参考に、キャリアパスポートの活用を進めています。

  • 中学校区全体での連携: 西牧野小学校、渚西中学校とも連携し、キャリアパスポートの交流会も実施するなど、中学校区全体での取り組みが始まっています。

三浦先生からの助言と今後の課題:

  • 「ゼロ歳から18歳まで」の視点: 小中9年間だけでなく、就学前や高校も含めたシームレスな連携が重要であり、京都市では「ゼロ歳から18歳までのキャリア教育」を意識しているとのことでした。

  • キャリアパスポートを中心とした情報共有: キャリアパスポートを中心に据え、小中高での情報共有・連携を推進していくことが今後の課題として挙げられました。

質疑応答と今後の展望

グループディスカッションでは、参加教員同士で活発な意見交換が行われました。その後の質疑応答では、書くことが苦手な子どもたちへのキャリアパスポートの活用方法や、中学校での連携の課題など、具体的な実践に関する質問が出ました。

今後の展開:

  • 多様な記録方法の活用: 書くことが難しい子どもたちには、写真や録音など多様な記録方法を活用し、日々の記録を通じて達成感や振り返りの機会を提供していく方針です。

  • 小中連携のさらなる強化: 中学校との連携が依然として課題であり、今後も合同研修などを通じて、児童生徒の成長を支える体制を強化していくことが確認されました。

  • 教職員の意識改革: 管理職による研修参加の経験から、現場での体験や見学の重要性が再認識され、子ども中心の教育観を全教職員に浸透させるための取り組みが求められます。

  • リソースの確保: 小中高連携やキャリア教育推進のためには、人的・金銭的リソースの確保が必要であるという意見も出され、今後の支援体制強化に向けて上層部への働きかけも視野に入れています。

今回の研修は、キャリア教育が「特別な時間」ではなく、子どもたちの「目的意識」を育むための「学校生活全体」で実践されるべきものであることを再認識する貴重な機会となりました。子どもたち一人ひとりの可能性を最大限に引き出すため、渚西中学校区の各学校が連携し、キャリア教育のさらなる推進に取り組んでまいります。