学校日記

令和6年度卒業式 式辞

公開日
2025/03/17
更新日
2025/03/17

校長先生のお話

式辞

ただいま 卒業証書をお渡しした、138名の皆さん 卒業おめでとうございます。本日のこの式を祝うためにご多用中にも関わらず、駆けつけてくださったご来賓の方々に深く感謝申し上げます。

また、保護者の皆さま、本日はお子さまのご卒業誠におめでとうございます。この日を迎えるまでに3年間、大変なときもあったかもしれません。それでもお子さまと向き合い、また寄り添いながらこの日を迎えられたことと思います。そして、本校の教育活動に対しましても、ご理解、ご協力を賜りましたこと、この場をお借りして感謝申し上げます。

私は、みなさんと同じ3年前に本校に着任し、みなさんと共に時を過ごしてきました。着任の初年度は、感染症対策で卒業証書は、各クラスの代表生徒のみにお渡していましたが、昨年度からは一人ひとりに卒業証書をお渡しすることにしました。高校では、多くの学校で、一部の生徒が代表として、卒業証書を受け取る形となっています。大学の学位記も一人ひとりが受け取ることはありません。ですから、もし、代表だけが受け取る形にすると、学校長から、ほとんどの生徒が直接卒業証書を受け取る機会がなくなってしまいます。今、その意味が分からなくても、今回も一人ひとりに卒業証書を手渡ししたいという思いが私にはあります。この思いを冒頭でみなさんと共有しておきたいと思います。

今年度はパリオリンピック・パラリンピックが開催されました。スポーツも音楽も、世界をつなぐ大きな力を持っています。オリンピック・パラリンピックでは、国境を越えた友情や、努力の結晶が輝き、それを称える音楽が響きます。私たちが歌う一つひとつの音楽も人の心を動かし、希望を届ける力を持っています。

今日は皆さんがこれから歌う「旅立ちの日に」という歌について2つ考えたいと思います。

まず、「旅立ちの日に」のエピソードについてです。

この歌は1991年に埼玉県にある秩父市立影森中学校(ちちぶしりつかげもりちゅうがっこう)の当時の小嶋 登(こじま のぼる)校長先生と音楽教諭だった坂本浩美先生によって3年生を送る教職員からのサプライズとしてのために創られました。

当時、この学校は大変荒れていたそうです。でも小嶋校長先生は、「歌声の響く学校」に変えたいと思い、合唱の機会を増やしたそうです。当初は、抵抗した生徒もいましたが、坂本先生とこの取り組みを続けた結果、徐々に歌う楽しさを知り、学校が明るくなったそうです。

1991年2月下旬、坂本先生は、「歌声の響く学校」を目標に取り組んだ3年間の集大成として「卒業する生徒たちのために、何か記念になる、世界にひとつしかないものを残したい」と思い、小嶋校長先生に作詞を頼んだそうです。校長先生は、一旦、「私にはそんなセンスはないから」と断りましたが、翌日には、坂本先生の机上に、思いのこもった詞を置いたそうです。それを見た坂本先生は、なんて素適な言葉が散りばめられているんだと感激し、授業の空き時間に音楽室にこもり曲作りに取り組むと、メロディーが湧き出るように思い浮かび、わずか15分で作曲できたとラジオ番組への手紙で当時を振り返っています。出来上がった曲は、卒業生に向けて披露されました。そして、その翌年からは生徒たちが歌うようになりました。何にでもいえることですが、何かを変え、改革をするいうのは簡単なことではありません。「歌」以外でも、生徒と教職員が一丸となり、数々の取り組みが相互に繋がって、学校が変わったのだと思います。

次に、もう一つの「歌詞」にこもる意味についてです。この歌は比較的私たちにわかりやすく表現しているので、意味が分かりにくい箇所は非常に少ないと思います。冒頭は「白い光の中に山なみは萌えて遥かな空の果てまでも君は飛び立つ」とはじまります。

 「白い光」とは「朝のまぶしい光」と推測されます。「山なみ」は「山々が連なっているさま」であり、「萌える」は「草木が芽吹く」ことです。ここで、視線に注目してほしいのですが、「朝のまぶしい光」から「山々」「遥かな空の果て」となっており、段々と見るものが大きく移り変わり、視野が広がっていくことが皆さんにも伝わってくると思います。まさに希望を胸に羽ばたいていく様子が想像できます。素晴らしい歌の出だしです。次に注目すべきところは、2番の歌詞にある「意味もないいさかい」「いさかい」とはわかりやすく言い換えると「ケンカ」です。先ほど、大変荒れた学校をなんとか「歌声の響く学校」に変えたいという校長先生の想いをお話しましたが、それが、少し垣間みれるだけでなく、そこからの成長を感じます。思い出すと3年前の皆さんが1年生の時の、皆さんと行った「オーケストラ鑑賞」で、鑑賞態度が悪く、本来のバス内解散を中止し、体育館で学年集会を開きました。その皆さんがこうして成長していることも重なり、感慨深いものがあります。メッセージの発信という観点からも違いがあります。1番の歌詞は、教職員として送る側の視点ですが、2番になると旅立つ生徒からの視線に変わっています。そして、「いま、別れのとき、飛び立とう未来信じて弾む若いちから信じてこのひろいこのひろい大空に」という言葉で締めくくられます。自分に対して、また仲間に対して、今心を決めて飛びだっていこうとするさまが描かれています。

当時の音楽の先生は、読売新聞のインタビューでこの歌のことについて「ありがとうの歌なんだよ」と言っています。作曲したとき、一緒に育った卒業生、地域の人、仲間の先生たちへの感謝の想いであったとも言っています。自分が思う「ありがとう」を胸に、それがちゃんと伝わった時、歌い手の責任が果たせるのだと言っています。

さあ、皆さんいよいよ卒業です 皆さん一人ひとりの「ありがとう」を精一杯歌い上げることでしっかりと感謝を伝え、輝かしい未来と幸せにむかっていけることを心よりお祈りし 式辞といたします。

令和七年三月十四日

枚方市立長尾中学校 校長  葉山 秀樹