8月29日 『子どもにどう平和を伝えるか』岡川陽介先生に学ぶ平和学習研修会
- 公開日
- 2025/09/01
- 更新日
- 2025/09/01
研修
西牧野小学校で「子どもにどう平和を伝えるか」をテーマに、枚方市立川越小学校の指導教諭、岡川陽介先生を講師にお迎えした研修会を開催しました。
平和学習というと、少し堅苦しいイメージがあるかもしれません。しかし、岡川先生は子どもたちの心に寄り添い、平和の尊さを「自分ごと」として感じてもらうための様々な工夫や実践を、熱い想いとともに語ってくださいました。
なぜ平和学習が必要なのか?
研修会は、「平和学習の目的は何か」という問いかけから始まりました。先生は、知識を教え込むだけでなく、子どもたち自身が「なぜ戦争をしてはいけないのか」を考え、感じることが大切だと強調されました。
そこで重要なのが、想像力です。 戦争を経験したことのない子どもたちにとって、想像力を働かせることは非常に難しいことです。しかし、絵本や映像、音楽を活用することで、当時の人々の暮らしや心情に思いを馳せることができます。
例えば、岡川先生は谷川俊太郎さんの絵本『戦争しない』を読み聞かせ、子どもたちに「戦争の本質」について問いかけます。また、平和公園が80年前は商店街や繁華街だったこと、そこに人々が笑顔で暮らしていたことを、当時の写真やアニメを使って伝えます。
「平和公園は最初から緑豊かな場所ではなかった。そこに住んでいた人たちの営みを想像することで、被爆の悲惨さがより心に響くのです」という先生の言葉が印象的でした。
記憶を未来へつなぐ
現在、被爆者の平均年齢は86歳を超え、あと10年もすれば直接体験を語れる人がほとんどいなくなってしまうという現実があります。記憶の風化が深刻な課題となる中で、私たちはどうすればよいのでしょうか。
岡川先生は、広島平和記念資料館の「魂の叫び」の展示や、遺品に込められた持ち主や家族の想いを子どもたちに伝える活動を紹介してくださいました。ベルトを握りしめて亡くなった少年、家族を探し続けた被爆者の話...。こうした個人の体験を通じて、子どもたちは戦争が単なる過去の出来事ではなく、一人ひとりの人生を奪った悲しい事実であることを学びます。
そして、川越小学校では、資料館の遺品を一つ選び、持ち主や被爆状況を調べて詩を書くというユニークな取り組みを行っています。 「遺品になりきって詩を書くことで、子どもたちは被害者の心情を追体験し、平和の大切さを自分ごととして捉えることができるのです」と先生は語ります。
子どもたちの「無関心」の壁を越える
研修会では、広島と比べて大阪では原爆の日を知らない子どもが多いという現状も報告されました。しかし、岡川先生は「子どもたちは無関心なのではなく、単に知る機会がないだけ」だと断言します。
授業で原爆の話をした後、関連する本を図書室で探す子どもがいたり、最初は関心がなかった子も熱心に話を聞くようになったりする様子は、子どもたちの知的好奇心や感受性の豊かさを示しています。
平和学習は、一度きりの特別なものではなく、普段の授業や日々の会話の中で、小さなきっかけを作ることが大切です。絵本やテレビの話題から、少しずつ平和への意識を育んでいくことができる、という先生からのメッセージは、私たち教員だけでなく、すべての人へのヒントとなるでしょう。
今回の研修会は、平和の尊さを伝えることの難しさと同時に、その重要性を改めて考える貴重な機会となりました。岡川先生の温かい語り口と実践に基づいたお話から、子どもたちの未来のために、今私たちに何ができるのか、そのヒントをたくさんいただきました。
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