学校日記

5月30日 6年生と保護者向け講演会

公開日
2025/06/01
更新日
2025/06/02

研修

40年前のいじめから現代の教育、そしてAI時代の未来へ

中山先生はまず小学4年生の頃に経験したいじめの記憶を子どもたちに語ってくれました。それは40年経った今も、私の心に深く刻まれています。当時のクラス全体に広がるいじめの空気、トイレの電気を何度も消されるような具体的な行為は、幼い心に大きな傷を残しました。いじめは、その瞬間だけでなく、その後の人生にまで影響を及ぼす可能性があることを経験が教えてくれます。

(以下、中山先生より)

同窓会が教えてくれた変化、そして残る課題

数年前に参加した同窓会では、かつていじめのリーダーだった友人が医師になっていることに驚きました。大人になった私たちは、いじめを「懐かしい過去」として語り合える状況にありました。しかし、いじめた側の記憶が完全に消え去るわけではないという現実も、同時に突きつけられました。この経験は、いじめの記憶が再会の中で再び表面化する可能性を示唆しています。特にいじめた側の方が自分がやってしまった深く酷い過去として一生心に記憶として残るからいじめは絶対にしないようにと子どもたちに伝えてくれました。

そんな辛い日々の中、小学5年生で担任になった先生との出会いが、学校生活を劇的に変えました。学校に行くのが急激に楽しくなり、この経験が「小学校の先生になりたい」という夢を抱くきっかけとなりました。一人の教師との出会いが、子どもの人生にどれほど大きな影響を与えるか、身をもって体験した出来事です。

「諦めない前向きな心の力」で磨く

その先生との出会いから学んだ「諦めない前向き攻撃」の精神は、人生の指針となっています。勉強、スポーツ、遊び、どんなことにも前向きに挑戦し、心の力を最大限に発揮することの重要性を実感しています。けん玉などの遊びを通じても、この「心の力」が多方面で発揮される可能性を子どもたちに伝えていきたいと考えています。

テクノロジーの進化とAI時代の到来

ポケベルからスマートフォンへ、わずか25年で劇的な変化を遂げたテクノロジーは、今や生成AIや翻訳技術の進歩によって、私たちの生活や社会のあり方を大きく変えようとしています。ドラえもんのようなAI的な存在が現実になりつつある中で、AIが大量の情報処理に優れている一方で、相手の気持ちを思いやる「共感」ができないという課題も浮上しています。

挑戦が当たり前になった時代、起業という選択

私自身、2年前に会社を立ち上げ社長として活動しています。かつては高校生や大学生が起業すると鼻で笑われる風潮がありましたが、現代は失敗を恐れず挑戦できる環境が整っています。変化の波に乗り、失敗から学び、挑戦し続けることが、これからの時代を生き抜く上で不可欠です。何も挑戦しなければ、成長もありません。

変化に適応し、失敗から学ぶ重要性

「変化の波に乗れる人」こそが、生き残れる時代です。そして、挑戦し、失敗から学ぶことが重要です。失敗を恐れて何もしなければ、何も得ることはできません。日記や振り返りを通じて、自分の行動や感情を客観的に見つめ、次の挑戦に活かす習慣を身につけることが、自己成長につながります。

子どもたちの「夢」は身近なところにある

「唐揚げを食べたい」「カレーを食べたい」といった日常の小さな欲求も、子どもたちにとっての立派な「夢」です。夢は、将来の大きな目標だけでなく、現在の小さな望みから始まるという視点を持つことが大切です。

保護者・教育者へのメッセージ:未来を育むために

子どもたちの成長過程において、日々の振り返りや内省は非常に重要です。担任の先生の矛盾に気づくエピソードや、お小遣いの例に見られる現実の矛盾など、子どもたちは敏感に大人の行動や社会の矛盾を感じ取っています。保護者や教師は、子どもたちの内省を促し、集団の中で他者と関わりながら自己を成長させる場を提供していく必要があります。

教育現場が抱える課題と未来への取り組み

  • 自己コントロールと自己認識の向上: 子どもたちが自分自身を客観的に見つめ、現状を把握することで、意見や自己批判に対してコントロールする力を育む必要があります。内面的な価値観や信念の形成が、行動やコミュニケーションの基盤となります。
  • 教育における価値観の伝達と習慣化: 親が「困っている人を助けよう」という価値観を伝えることで、子どもがその行動を取るようになるように、良い行動を褒め、注意すべき点を労するバランスを取りながら、習慣化を促すことが重要です。
  • 宿題と学習方法へのアプローチ: 宿題は義務ではなく、子どもが自発的に学びたいと感じた場合に行うべきものです。授業の中で学習が完結するという前提に立ち、必要に応じて家庭で小規模な課題を設定する方法を検討していく必要があります。
  • 子どもの個性尊重と学習スタイルの違い: 文字を読むのが苦手な子や計算が得意な子など、個々の特性に合わせた教育方法を取り入れることが重要です。無理に苦手分野を強制するのではなく、子どもの「好き」を伸ばすことで学習意欲を高めるべきです。
  • 発達と生物学的背景に基づく教育の理解: 前頭葉の進化や発達の過程を理解することは、子どもの社会性や行動を理解する上で不可欠です。
  • モチベーションと報酬に関する議論: 「やらされるものは嫌い」という意見が示すように、子どもたちが自発的に取り組めるよう、夢や目標に沿った学習を促し、自主練習の計画立案や、適切な「ご褒美」設定によってモチベーションを維持していく工夫が必要です。
  • デジタルゲームの学習利用とルール設定: ニンテンドースイッチなどのゲームが学習に応用可能である一方で、長時間の使用による学習時間の削減などのリスクも存在します。子どもが自制できない場合は、親が介入し、具体的な使用時間のルールを設定することが求められます。
  • 非認知能力とAI活用の教育: AI技術と非認知能力の育成を組み合わせた新しい教育方法の模索が必要です。これからの社会に対応するために、AIやタブレットといったデジタルツールの活用は不可避であり、教育の価値観が大きく変化する中で、具体的な教育プランを策定していく必要があります。

最後に

いじめの記憶、教師との出会い、テクノロジーの進化、そして起業。これら全ての経験が、私に「変化と挑戦の重要性」を教えてくれました。子どもたちが、AI時代を強くたくましく生き抜くために、私たちは「諦めない前向き攻撃」の精神を伝え、自己認識を深め、行動力を育むための教育環境を整えていく必要があります。

中山先生、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

本日はご多用の中、講演会に参加していただきました保護者の皆様、ありがとうございました。